耳科専門診療科

犬と猫の耳科とは?

犬と猫では外耳炎が一番有名ですが、人と同じようにさまざまな種類の耳の病気があります。動物は自覚症状を訴えないため、私たちがしっかりと病気を見つけてあげなければならないのですがどうしても発見が遅れることが多く、残念ながら、病院に来た時にはすでに病気がかなり進行してしまっていることも珍しくありません。
耳の病気では痒みや痛みが出ることが多く、これが続くと例えば怒りっぽくなるような性格の変化が現れることもあります。おそらく自分の身に置き換えれば、毎日眠れないほどの不快感に悩まされているのではないでしょうか。また、外見上はあまり分からなくても、実は耳の中で大変なことが起こっていることも多いのです。
動物では皮膚の病気や内科の病気の一症状として耳に病変が出ることが多いため、耳の病気の診療には皮膚科や内科についての知識・経験も必要になります。

人の耳鼻咽喉科のお医者さんに行くと必ず内視鏡で耳の中を検査されると思います。動物でもこれまで手持ちの耳鏡で耳の中をのぞくことはできましたが、十分観察したり処置したりすることができませんでした。しかし、ビデオオトスコープという動物の耳専用の内視鏡が開発され、耳の中や鼓膜をしっかりと観察できるようになったことから、ここ十年ほどで犬や猫の耳の診断・治療は飛躍的に進歩しています。
内視鏡を用いることで診断が正確になり、さまざまな耳の病気の診断と治療が可能になってきました。また、中耳炎のような耳の奥の方の病気は、病状を詳しく把握するため内視鏡による検査に加え、CT検査やMRI検査が必要になることもあります。
当院の耳科専門診療科では、獣医耳科専門獣医師を中心にビデオオトスコープやさまざまな種類の内視鏡、CT検査を駆使して行う内科的な診断・治療から、病状によっては必要になる耳の手術、さらには国内でほとんど行われていない動物の聴力検査まで、多くの耳の病気に幅広く対応しています。また耳と鼻、咽頭(鼻の奥)はお互いに近い所にあるので、耳の病気に関連した鼻や咽頭の診断・治療も行います。

今も多くの犬や猫達が耳の病気で苦しんでいます。動物たちを苦しみから早く解放してあげて下さい!

当院の考え方・治療方針

  • 最新の内視鏡(ビデオオトスコープや硬性鏡)を駆使した耳科診療
  • CT 検査
  • 犬と猫の聴力検査
  • 耳の病気全般(外耳炎・中耳炎・内耳炎など)の内科診療~外科まで対応
  • 耳に関連する皮膚の病気や内科の病気の診断、治療
  • 内視鏡や CT 検査を活用した耳や鼻の奥(咽頭)の異常の診断・治療
  • フレンチ・ブルドッグやパグといった短頭種に対する呼吸改善のための治療(鼻の入り口の拡張・咽頭の奥に伸びた組織(軟口蓋)の切除・鼻の中のヒダの切除・喉の異常の改善など)

耳の病気の治療は、まず耳の中にどんな病変があるか確認することから始まります。
ビデオオトスコープは動物の耳の形に合わせて作られた内視鏡で、明るいライトで照らしながら耳の中を拡大して鮮明に観察できます。ビデオオトスコープには小さな穴が開いており、観察するだけでなくそこに器具を通していろいろな検査や処置を行うこともできます。
このためこれまで手術でしか治せなかった耳の病気も、動物にできるだけ負担をかけずに内視鏡で治すことが可能になってきました。

外来診察でのビデオオトスコープ検査には、通常、鎮静や麻酔は必要ありません。ただし、耳の中を詳しく調べて耳道の中や鼓膜の近く、中耳で非常にデリケートな処置を行う必要がある時は、動物に不安や痛みを与えないようにして、検査と処置を安全に行うために、ほとんどの場合、鎮静や麻酔をかける必要があります。その際には、事前に鎮静や麻酔を安全にかけることができるかどうかを判断するための検査を行います。

内視鏡システム

耳道のできもの

犬の鼓膜

内視鏡の処置器具

耳専用の内視鏡(ビデオオトスコープ)

レーザーを用いた「できもの」の切除

耳の中で固まった耳垢の摘出①摘出前

耳の中で固まった耳垢の摘出②摘出後

ビデオオトスコープによる炎症性ポリープの摘出

耳や鼻、咽頭、喉の診察ではほかにもいろいろな内視鏡を使います。
「耳鼻咽喉科」と呼ばれる通り、耳の病気と鼻、鼻の後方(咽頭)、喉はお互いに関わっていることがあり、耳の病気でも他の部分を検査したり処置したりしなければならないことがあります。鼻や咽頭、のどの異常を直接観察したり、病変部があれば切り取って、その正体を調べたり、喉の入り口の動き方を調べたりします。また手術時には、内視鏡を活用することで治療成績が向上します。

細部を観察する細い内視鏡(硬性鏡)

先が曲がる内視鏡

鼻の奥(咽頭)の検査

当院では80列マルチスライスCTという高速・高性能なCT装置を備えています。特に耳や鼻、咽頭の頭の奥にある部分は、レントゲン検査だけでは十分な情報が得られないこともあり、CT検査が非常に有効です。
例えば、中耳炎の場合でも種類がいくつかあり、その病状をCT検査で正確に確認することで治療方針も大きく変わることがあります。また、耳の奥に腫瘍や炎症などがある場合は、CT検査でその広がりや、骨への影響などを知ることができ、診断と治療に大きく役立ちます。

CT装置

耳とその周辺のCT

海外では難聴犬のコミュニティーがあるほど動物の難聴に高い関心が持たれていますが、残念ながら日本では動物の聴力についての理解がまだ乏しく、聴力検査を行える施設もほとんどありません。動物で聴力を正確に確認するためには、耳の異常があるかないかの検査(ビデオオトスコープ検査)と聴性脳幹反応(BAER)という脳波を図る検査が必要になり、ヘッドホンでいろいろな大きさの音を聞かせてその時に反応する脳波を調べます。
当院では誘発電位計という特殊な装置を使用して BAER を実施しています。動くと脳波が拾えないため、通常、鎮静や麻酔が必要になりますが比較的短時間で済むため動物の負担は大きくありません。
「この子は聞こえていないのでは?」と感じた際にはご相談ください。

誘発電位計

聴力検査の様子

正常な犬のBAER波形

犬と猫の耳や鼻、咽頭、喉の病気は内視鏡や内科治療で対応できる病気だけではありません。動物になるべく負担がかからないよう内科的に維持ができそうなものはできるだけ保存的治療(手術をしない治療)を試みますが、保存的治療では悪化の進行を止められない時や、動物の苦痛を取り除くことができない時、悪性腫瘍がある時などは手術を考えます。判断を躊躇していると手遅れになってしまうこともあるので、内科と外科のどちらにも偏らないバランスの取れた診療を心掛けています。外耳~中耳までのいろいろな手術に対応しています。また、パグやフレンチ・ブルドッグなど短頭種では鼻や咽頭、喉の異常により呼吸の流れが悪くなり(短頭種症候群)中耳炎に関わっていることもあるため、鼻の入り口を広げる手術や、鼻の奥のヒダを減らす手術、長く伸びた咽頭の奥の組織(軟口蓋)を切り取る手術、扁桃や喉の入り口の異常を改善する手術など、これらの問題を解決するための手術も積極的に行っています。

さまざまな手術に対応できるよう準備しています

症例紹介

現在準備中